2011年度取材

所 千晴 准教授
所研究室(創造理工学部 環境資源工学科)
所在地:西早稲田キャンパス51号館

複雑に混合する物質を、
環境にやさしいやり方で分ける技術を研究

 研究の進捗報告の場では、物質を粉砕する機器の設計、「2次元回転壁」のシミュレーション、閉山した鉱山で水に含まれる有害物質の分析について発表が行われていました。設計、コンピューターによるシミュレーション、古い鉱山の調査。この多様な内容は、何の研究に関係するのでしょうか?

 博士2年の原口大輔さんの説明によると、「対象が水だったり電子機器だったりしますが、平たく言うとすべて分離技術なんです」とのこと。水から有害物質であるヒ素を除去したり、廃棄された電子機器からレアメタルを取りだしてリサイクルしたり。なので、分離のためのシミュレーションから実際の機器の設計、実地調査と幅広い分野が研究対象となっているのですね。有害物質の除去と一口に言っても、ほかの化学物質を大量投与することで中和するのであればまた別の問題が起こってしまう。では、もっと効率的で環境にも影響しないやり方を見つけよう、というのが、所研究室の大きなテーマなのです。
 企業からの「こういう現象があるんだけど学術的に解明してほしい」「この物質がこの中から取れなくて困っている」といった依頼に応えるなど「先に現象があって、そこに理論をつける」というタイプの研究が多いため、まずは手を動かし、実際のモノを見ながら学んでいくというアプローチの手法が採られています。3月、新4年生が研究室に配属されたら、とにかくまずなんでもいいから実験してみなさい、現象を見てみなさい、と指導されます。「これをちょっと溶かしてみようとか、砕いてみようとか」そんな大枠が提示されて、実験しながら機器の使い方やノウハウを学ぶのだそうですが、これなら相当のスピードでレベルアップできるのだそうです。

所先生は、ゼミ生の発表の端々で「その実験試料、いくらぐらいするの?」「10kgまでならボンボン買っちゃって!」「××先生の研究室に顕微鏡たくさんあるから借りてきて!」とポンポンと指示やコメントを投げかけ、ラリーのように軽快に発表は進みます。

畑が違う分野のことをまとめあげる先生はスゴイです、とゼミ生の尊敬を集める所先生。「私は毎日研究が楽しいと思っているので、学生にも楽しいと思ってほしい」と、学生に研究や学問のおもしろさを伝えるにはどうしたらいいかを常に考えている、伝えることを重視する先生です。

頭も、手も、足も、全部使って解明していく

 そして研究室の中だけで勉強するのではなく、学会、ヒアリング、見学にもどんどん出かけます。「東日本大震災の隠れた問題に、鉱山のヒ素の堆積所が決壊してヒ素が流出したというのがあるんです。有害物質で汚染された水の処理もうちの専門なので、実際の現場を見てヒアリングするために、チームのメンバーと2日で3つの鉱山を回って来ますよ!」とエネルギッシュな所先生。「頭も、手も、足も、全部使って解明していく。理系の研究っていうのはそこだと思うんですよね」。

 4年生の井澤彩さんも、理論優先ではなく「現場に近い」点に魅力を感じて、所研究室を志望したそうです。「理論を作るというよりは社会と直結した研究中心で、現象解明の部分もすぐに現実的に役立てていこうという方向性です」と語る原口さんは、小学生のころ下水処理場のそばに住んでいて、当時の泡だらけの川面を見て水や環境に興味を持ったといいます。現在は水質もずいぶん改善されてきていますが、企業と研究者とが協力し合って努力を積み重ねてきた結果なのでしょう。環境問題は日々の暮らしの中でも接することの多いテーマで、関心を持っている高校生も多いと思います。所先生、研究室ではどんな学生が歓迎されますか?
 「大学3年まではずっと教えられる立場ですが、その中でも自分だったらこうするのになと考えながら学べる人は研究の世界ですごく伸びるんです。もちろん、ちょっとだまされたつもりでやってみようと思える素直な面も必要なんですが、自分なら・・・と能動的に動ける人に来てほしい、そういう人になってほしいと思っています」
 技術開発によって環境保護に貢献したい人は、この分野で力を発揮してみませんか?

昼食もそこそこに研究に没頭。よい研究をするにはやっぱり時間が必要で、みんな徹夜で実験したり一緒に過ごすので、みなさん仲がよいそうです。


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