
重村 智計 教授
重村ゼミ(国際教養学部 基礎演習IA)
所在地:早稲田キャンパス11号館
ゼミに入って最初に課される宿題は、A4の紙1枚に文章を書いてくること。テーマは、「なぜ早稲田を選んだのか」。大学1年生を対象にしたゼミのレポートとしては、随分と当たり前のように感じますが・・・。ところが、ほとんどの答案が0点!
「自分が日本語をきちんと書けると思っているバカがいる。主語のない文章を書くヤツは、みんな0点です」と、重村先生。過激な言葉が、温和な表情から遠慮なく飛び出します。
「高校生のときは、先生の言うとおりにしておけばよかった。でも、大学に入ったら自分で考えなければダメ。発言しないヤツ、言い訳するヤツは、落第です。ウソでもいいから何か答えるように指導しています」
自分で考える力を養うこと、きちんとした日本語を書くこと。それを重村ゼミは重要視しているのです。
この日のテーマはウォルター・リップマンの「世論」。「ステレオタイプ」という言葉を初めて使った名著です。ひとりのゼミ生が、自分の原稿を持って壇上へ。20人ほどの仲間、そして先生の前で自分が課題図書を読んだ感想を発表するのが基本的なゼミの進め方です。
質疑が次々と飛び出し、彼の発表はなんと30分以上に。発表者とのやりとりは、ときに本のテーマから外れて、身近な出来事から歴史上の事件にまで発展します。みんなが自分の言葉で表現し合う、それがこのゼミの流儀です。
ゼミ生のレポートには、重村先生が一枚一枚、ていねいに修正を入れてくれます。
質疑応答は活発。テーブルの上にはお菓子やお茶が並びます。
重村ゼミのもうひとつの特徴は、独特のリラックスした雰囲気。この日も、「今日は北林さんがマフィンを作ってきてくれました」と、先生自らマフィンを食べながらゼミがスタート。ゼミ生たちも思い思いにペットボトルのお茶を取って席に着きます。
「国際教養学部は英語で行われる授業も多くて、けっこうハード。このゼミでは半ば息抜き感覚で楽しんで欲しい」。先生の言葉を裏付けるように、飲み物のおかわりに立つ者、自分のノートPCを開く者など、自由そのもの。ゼミ生のインタビューからは、「友達ができた」という声が多く聞かれました。
ところで、先生、ゼミのテーマは国際関係論のはずですが?
「国際関係は人間関係とまったく同じ。嫌なヤツ、うざいヤツとは、関係が複雑になる。そして、判断ミスから喧嘩、戦争が起こる。自分自身を知り、相手を知ることが、国際関係を理解する基本です」
視野を広げ、考え方を柔軟にしてくれる有意義な時間です。
井上靖さん(1年)は、「毎回の授業、経験談がとてもおもしろくて、ゼミが楽しみです。レポートも最初は0点でしたが、点数が上がってきてやりがいがあります」と、「0点」のインパクトもなんのその。毎回がんばっている様子です。
今回取材した重村ゼミは、国際教養学部一年生を対象にしています。英語と日本語の新聞記事の読み比べや、課題図書を読んでのレポートとその発表、それに対する質疑応答。最後は、国際経験豊かな重村智計先生が多角的かつ変幻自在な分析を試みます。
これは基礎演習と呼ばれる新入生向けのプログラムで、講義型の授業とは異なり生徒自身が発表し議論することを目的としています。
自由でのびのびした雰囲気の中で進められるゼミは、逆に言うと積極性、自主性が求められます。一般的にゼミと聞いてイメージするものとは一味もふた味も違う、個性的なゼミです。
1年・鈴木 豪さん
1年・北林 未菜さん
『夜と霧』ヴィクトール・E・フランクル著(みすず書房)
『後世への最大遺物』内村 鑑三著(岩波文庫)
著者の人生を知り、その著書を読むことで、歴史上の事件やその背景を深く考えることができます。生きる意味を学ぶためには、良書を読み込むことが大切です。