
西原 博史 教授 [博士(法学)]
西原ゼミナール(社会科学部 法学分野)
所在地:早稲田キャンパス14号館
http://www.f.waseda.jp/nissie/
ここはどんなゼミ? を知るため、まずは恒例のディベート(ルールに従って進める討論会)を見学。この日のテーマは、ある週刊誌が、記事にされた関係者から出荷差し止めを要求されたという事件でした。この事件をめぐる「表現の自由vsプライバシーの保護」という問題を、週刊誌側・関係者側の2つの立場から議論するのです。
ゼミ生はそれぞれ5人ずつのチームに分かれ、あらかじめチームでまとめた主張を発表(立論)。質疑応答でお互いの矛盾点などを指摘しあった後に、最終弁論でもう一度主張をまとめます。参加しないメンバーは判定人として、論理は通っているか、言葉はわかりやすいかなどを細かく採点していきます。
週刊誌側の最終弁論は2年の副島さん。8分の弁論を堂々とこなしたように見えましたが「まだディベートは2回目。緊張して心臓バクバク!」だったそうです。対するチームは3年の林さん。さすがに慣れているのか、ジョークも交えながら、自分たちの主張をしっかりまとめていました。
「ディベートは、回を重ねるごとに明らかに上達しますよ」と西原先生。「相手が自分の論理の弱いところをついてくる、それにだんだん対処できるようになる。議論ができるようになると、自分の研究発表のときも、論理の組み立てがしっかりしてきます。」
このようなディベートを通して「議論する力」を身につけ、先生や仲間と議論を重ねながら自分の研究テーマに取り組む。それがこのゼミの流儀のようです。
ディベートのようす。 西原先生が「ディベート」を取り入れているのは、学生時代にドイツの大学で参加したゼミがきっかけ。「『国家と良心』というテーマのゼミでしたが、みんなえらく楽しそうに議論している。ひとりひとり『オレは国家と良心についてこう考える』という主張がまずあって、それをそのまま言っても通らないから、いろいろ勉強して理論づけするわけです。議論に使えると思うと勉強も楽しいんですね。そんなに楽しいことならとつられて、私もこの道に(笑)」。
そんな先生の率いるゼミはどんなところ? という問いに、林さんは「小さな知識でも意見でも、何か発言すれば、必ず周囲からリアクションが返ってくるところ」。ゼミ全体に、意見を交わすのはいいことだ! という姿勢が感じられますね。「特に先生は、こちらがどんなにつたない意見を言っても必ず深く掘り下げて展開してくれて、いつも驚かされる」のだそうです。
4年生の岡本さんも「先生は常に学生と視線をあわせて話してくれます。私たちに知識がなくても決して『勉強が足りない』とは言いません。でも、話しながら、こちらの考えをどんどん引き出してくれるので、いつの間にか自分のやりたいことや知識が整理されてしまう。それで勉強しようという気になるんです」。
誰に聞いても「先生と話すとモチベーションがあがる」と言うゼミ生たち。議論の達人(?)西原先生は、学生のやる気を引き出す達人でもありました。
3年・林 綾人さん
4年・岡本 熱子さん
このゼミでは、「現代社会における基本的人権」をテーマにしています。いろいろな人が共存する社会の中では、ぶつかり合うお互いの主張や利害関係をきちんと調整していくことが必要です。その際、私たちの民主的な社会は、本当に皆にとってフェアな秩序を作っているのでしょうか。表現する側とプライバシーを守ろうとする側、防犯活動が大事だと思う人と監視を嫌う人。どちらかが正しい/間違っているわけではなく、一人ひとりの権利を尊重した社会秩序を目指した調整が必要なテーマです。
2年・副島 勇作さん
『監視カメラとプライバシー』 西原 博史編(成文堂)
西原ゼミ2009年卒業生たちの共同研究。
今、学校やコンビニや商店街や盛り場に防犯カメラがどんどん設置されている。カメラに収められた映像はどう使われるのか。自分の映像が加工されて、インターネットに流されたりしないか。日本では、法律による決まりは何もない。「犯罪が起きない環境を作るために」という理由で、私たちは何を犠牲にしているのか。そして、その犠牲は必要なのか。ゼミの学生たちがいろいろな人の話を聞き、文献を読んで理解を深めた成果がこの本。「こうすればいい!」という偉そうな結論が得られたわけではないが、一緒に考える手がかりにしてもらえれば嬉しい。

