2011年度取材

菊地 栄治 教授
菊地ゼミ(教育学部 教育学演習I G・II G)
所在地:早稲田キャンパス16号館

早稲田祭アカデミック企画で真剣勝負!

 時は10月後半。そう、早稲田祭直前です! 学園祭というとライブイベントや模擬店、サークルの発表が浮かびますが、大学なので当然アカデミックな催しも行われます。そのひとつが、教育学部菊地ゼミによるイベント。単なる研究発表ではなく、来訪者とともに考え、会話し、お互いに学ぶという趣向で、毎年さまざまなテーマに取り組みます。
 今年のイベントタイトルは『「知ってる」の先へ!ガチで考える90分 ~被災者の生活向上のために~』。未曾有の震災の年として、「被災者の生活と、自分たちにできること」がテーマに選ばれました。

 取材したのは、通しリハーサルの日。企画は主にオープニング映像、6つのプレゼン、ディスカッションとで構成されていて、細かく時間配分されたタイムテーブルに沿って本番さながらに進行されます。プレゼンは「メディア」「ボランティア」「行政」「娯楽」など小テーマごとに。必要とされた地域情報、阪神大震災と比較してボランティアが少ないこと、被災者への適切な声かけ、娯楽の不足など個々の事例を提示しての発表に、さまざまな考えが頭をめぐります。そして、その思いをディスカッションの部でほかの参加者と共有。リハーサルでは、ゼミ生が「女子高生」「スナックのママ」など多種多様な人物になりきって意見交換を行ってリハーサル終了です。今回の反省点を元に最後の詰めに入るということで、昼食を取る間も惜しんでの共同作業が続いていました。

がんばった甲斐あって、本番は無事大成功! 責任者の塚原さんを胴上げしています。打ち上げも相当盛り上がったとのこと。

 5月から話し合いを重ねて、各プレゼンの作成・発表、本格的なオープニング映像やチラシ、看板の制作、ディスカッションのファシリテーター(コミュニケーションを引き出し、まとめる人)、タイムキーパー、すべてをまとめる責任者・・・メンバーがそれぞれの役割を担当し、緻密に練り上げて完成させた企画です。そしてなによりも、伝えたい! 話したい! 考えて実行したい!というゼミ生のみなさんの熱い思いが、根底を支えているのです。

信頼し、共有することから学び合いは生まれる

 早稲田祭への参加はゼミの一大イベントですが、ほかの時期にはどんなふうに勉強しているのでしょう。ゼミの始まりには「ニュースな時間」と銘打った、一人が興味を持ったニュースを提示し、みんなで話し合う時間が設けられます。問題意識を深める、伝えたいことをちゃんと伝えるトレーニングなのだそうですが、教育学では一番の大所帯の菊地ゼミ、いろんなタイプの人がいるために意外な角度からの意見も飛び出し、これもゼミの特徴になっているのだとか。

 菊地先生にお話をうかがうと、再三「伝える」という言葉が出てきます。「思ったことを伝えるには、心をオープンにして仲間と信頼関係を築くことが必要」という信念のもと、先生はさりげなく働きかけ、考えを口にしやすい場を育てていらっしゃるようです。「論文を媒介とした『先生対個々の学生』という関係に限定されたゼミではないですね。論文を読んで一人で考えることも大事ですが、せっかく時間を共有しているので、学び合ってほしいです」。ふだんからゼミ生が先生の研究室を訪れることも多く、合宿では先生がギターの腕前を披露するなど、話しやすいフランクな雰囲気がゼミには漂っています。「無駄な時間も共有することでちょっとした思いも共有でき、それ自体が学びになります。一方、なれ合いになってもダメなので、早稲田祭のようなイベントで緊張感をもつこともすごく大事ですね」
 90分間のイベント。なんとなく発表をして話し合いをするのでも形だけは成立してしまいますが、それでは忙しく役割をこなした自己満足しか残りません。一方的に思いを押し付けるのではなく、参加者に楽しんでもらいながら伝える方法を常に考え、試行錯誤してよりよいものにしていく。これって、イベント企画だけでなく「教育」の現場でも必要なプロセスではないですか! 早稲田祭に参加すること自体が「教えること、伝えること」の勉強になっているんですね。「外の人に伝えるために精一杯努力して、自分で社会を変えていくことができるんだという経験をちょっとでもしてもらえればいいなと思っています」と菊地先生。伝えることから始めましょう!

夏合宿での話し合い風景。大きなテーマは「東日本大震災」と決まったものの、そこからどう企画に落とし込むか、個々のテーマの設定には苦労したそうです。 先生はいつも撮影役。一見クールな印象の菊地先生ですが、現役ゼミ生や卒業生と結成したバンド「HEY! 教授」でギター&ボーカルを担当していたり、自虐的なギャグを言い過ぎて学生が応答に困ったり・・・。ユニークなセンセイです。


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