2011年度取材

勝藤 拓郎 教授
勝藤研究室(先進理工学部 物理学科)
所在地:西早稲田キャンパス 51号館
http://www.f.waseda.jp/katsuf/lab/

前人未到のジャングルで、誰も知らない湖を発見するような喜び

 入り組んだ51号館地下にある、勝藤研究室の実験室。カションカションと絶え間なく聞こえる機械音、高温に熱されているのが一目でわかる見慣れない機械、注意事項がでかでかと書かれたX線装置・・・。「モノを作る研究室なんですよ」と、勝藤先生。物理の研究室にも、理論中心、実験中心といろいろなタイプがありますが、この研究室では自分たちで試料を作り、「新しい物質」から「新しい物理」を生み出す基礎研究を行っているのです。
 新しい物理を生み出すとは、新しい「ものの見方」や「原理」を見つけ出すこと。「たとえば、ある物質は温度が変わると、流れていた電気が流れなくなったりすること(相転移)を見つける。次に、それがなぜ、どういう条件で起こるのか、どういうメカニズムなのかを調べる。こういった実験を通じて、新しいものの見方や原理を探るんです」。

 科学技術が進化し、世の中は完成されたものだらけと感じることもある現代ですが、「新しい物理」は常に発見され続けていて、そこには学生さんも到達できるんですね。「基礎研究というのは基本的には、『誰も知らなかったことを最初にやる』ことなので、その楽しみを学生に伝えたい。いまだかつて誰も見たことないよねっていう現象を、今日俺初めて見たよっていうのが喜びなので。ジャングルの、誰も行ったことのないところに湖があった、山があった、あれに近い感じですね。車じゃ入れない、既成の機械が役に立たない、そんな状況で手作りの道具を持って突き進んだら、そこに誰も見たことのない湖があった。そういう『初めて見た』喜びを味わえますよ」
 誰も見たことのない現象が、自分が工夫して開発した手法や試料から明らかになる。研究者冥利につきる瞬間ですね!

壁際でさりげなく稼働しているこちらの機械は1300℃にもなっているそうです・・・。

気力と体力が試される研究も、優しい先輩が支えてくれる!

 とはいえそう簡単に成果は得られません。研究室メンバーのみなさんに聞くと、みなさん口をそろえて「物質を作るのに十数時間見てなきゃいけなくて、なのに作っても作っても求める物質にならないとか」(修士1年・伊藤寿朗さん)、「前日は大丈夫だったのに、何も変わっていないはずなのに、今日測ってみたら違うとか」(4年・蘆澤美佐さん)、と苦労を語ってくれます。そして求められる結果が得られなかったときは、ひとつひとつ原因を探るという、時間と体力の勝負!の世界です。
 気力が続かなくなることもあるのでは? 「でも、先輩たちが優しくて。ゼミに入って、最初は先輩が付きっきりで試料の作り方を教えてくれるんですが、私が初めて一人でやったときに、何日もかけた下準備がおじゃんになるような衝撃的な失敗をして。ものすごく落ち込んでたら、先輩がプリンを買って来てくれたんです。その気持ちがすごくうれしくて、そのあと頑張れました」(蘆澤さん)。きっと、その先輩も同じような経験をして成長したんでしょう。

 私も朝から晩まで試行錯誤していたときに先輩にプリンもらいました、と笑う古橋明日香さん(4年)は、物性に興味があって光学測定に取り組んでいるそうです。「この研究室では自分たちで作った試料を測定しているというところが魅力的でした」と、ものを作ることと測定・理論の両面から学べる点が、研究室選択のポイントだったようです。時間のかかる測定が、アイディアひとつで楽になることもあるそうで、それを考えるのも楽しいところなのだとか。
 「物質を作ること」に興味がある学生が集まる勝藤研究室。先生は学生さんの一人ひとりの個性を見極め、研究テーマの設定から研究を進めるにあたってのアドバイスまできめ細かく対応してくれます。「いろんな人がいろんな形でいろんな成果を出す。なのでとくにこういうタイプの人が向いているとかはないと思いますよ。興味さえあればなんとでもなる」とのことですので、「自分が初めてこれを見た!」を体験したい人はぜひ目指してみてください。「高校の物理っていうのは、19世紀より前の物理。大学に入って初めて20世紀の物理が学べて、そうしたら最先端まではひとっ飛びなんですよ」。

実験室では実験試料作りが行われていました。物理学と聞くと計算というイメージがありますが、「モノを作る研究室」だけに職人的作業もこなします。 現在制作中の新しい測定機器を見せてくれ、「はんだ付けからやりますよ」と蘆澤さん。最先端の物理への道は、手作業から始まるんですね!


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