2010年度取材

酒井 紀幸 教授
感性文化ゼミ(文化構想学部 複合文化論系)
所在地:戸山キャンパス

「事象」からスタートする学びのスタイル

 この日のゼミは学生が制作した映像作品の上映から始まりました。3年生全員が2~3人のグループに分かれて「その人の哲学、世界観が伝わる作品を作る」という課題が出されたのだとか。その中から見せていただいた作品は、映像と音楽、インタビューを組み合わせて「剥製師」を描いた、ミニドキュメンタリーでした。
 酒井先生のご専門は哲学、美学、宗教哲学。3年のゼミは、まず哲学の入門書を読むというイメージだったのですが?「学問というのは現実感覚の上に成り立つものです。哲学も美学も、現実とかけ離れたものとして学ぶのではなく、常に現実の事象にフィードバックさせたい」と酒井先生。だからこのゼミでは、今ある問題、事象について考えるところからスタートするのだそう。ゼミ生たちは、自分が興味のある事象をテーマに、レポート発表をしたり議論をしたり、ときには映像作品を作ったりといったアプローチをしていきます。ゼミ生が取り組んでいるテーマはファッション、食、メディア、アートなど、実にさまざま。テーマもアプローチも、本当に自由に選べるのです。

 もちろん単なる「興味」を「研究」にしていくには、裏付けとなる学問が必要。3年の櫻井謙介さんは「高校生のときに現象学の本を読んで、ぜひこれをやりたいと思って」このゼミに入ったそうです。今のテーマは、ツイッターやウェブなどを含む現代のメディアについて、現象学的な分析をすること。それなら現象学の勉強はどこで?・・・というと、「事象をとらえようとする過程で、核となる考え方を学ぶ必要を感じたら、そのときは宗教・哲学・文学論といったテクストを原語で読む読書会に参加すればいい」と酒井先生。これをやりたいという意欲があれば、学び方すら選べるゼミのようです。

3年・櫻井 謙介さん

90分のゼミには収まらない!

 このゼミの特徴のひとつは、ゼミ時間以外の活動が多いこと。ゼミ生たちはそれぞれのテーマにあった「研究会」にも参加しています。たとえば「食の文化研究会」は、毎月スペシャリストを招いて講演会を開いています。学生だけでなく一般の方も参加でき、7月の講演会では120名を超える方が集まったという人気の研究会です。
 この研究会ではコメンテーターとして食に関する専門家の他、ゼミ生が加わります。学生質問者として参加した3年の松坂由季さんは「私が参加した回は寿司職人の方でした。前もってお店に伺い、仕込みや仕入れを見て、インタビューもしてきました。職人とは何かということが少しわかった気がしましたし、お寿司はおいしかったし(笑)」それはゼミ室の中ではできない経験ですね。「そうですね。こういう自由な切り口から勉強していけるのが、このゼミのよさだと思います」。
 この研究会のほか、ファッション・社会文化研究会、フローラルデザイン研究会などなど、たくさんの研究会が立ち上がる予定。ゼミの3年生が中心になって計画している研究会もあります。
 このような活動について、酒井先生は「ここでは受身で学ぶのではなく、協力してくれる人のネットワークを利用しながら、自分で学びをマネージメントすることを勧めています。それこそ、社会に出てから必要な力ですから」と言います。

 その先生は「仙人みたいだけど、エネルギッシュな先生です。酒も飲むし体力もあるし(笑)どんな学生より元気!(櫻井さん)」酒井先生のネットワークとフットワークに後押しされて、ゼミ生たちは教室も大学すらも飛び越え、学びのフィールドを広げています。

3年・松坂 由季さん


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