
酒井 紀幸 教授
感性文化ゼミ(文化構想学部 複合文化論系)
所在地:戸山キャンパス
この日のゼミは学生が制作した映像作品の上映から始まりました。3年生全員が2~3人のグループに分かれて「その人の哲学、世界観が伝わる作品を作る」という課題が出されたのだとか。その中から見せていただいた作品は、映像と音楽、インタビューを組み合わせて「剥製師」を描いた、ミニドキュメンタリーでした。
酒井先生のご専門は哲学、美学、宗教哲学。3年のゼミは、まず哲学の入門書を読むというイメージだったのですが?「学問というのは現実感覚の上に成り立つものです。哲学も美学も、現実とかけ離れたものとして学ぶのではなく、常に現実の事象にフィードバックさせたい」と酒井先生。だからこのゼミでは、今ある問題、事象について考えるところからスタートするのだそう。ゼミ生たちは、自分が興味のある事象をテーマに、レポート発表をしたり議論をしたり、ときには映像作品を作ったりといったアプローチをしていきます。ゼミ生が取り組んでいるテーマはファッション、食、メディア、アートなど、実にさまざま。テーマもアプローチも、本当に自由に選べるのです。
もちろん単なる「興味」を「研究」にしていくには、裏付けとなる学問が必要。3年の櫻井謙介さんは「高校生のときに現象学の本を読んで、ぜひこれをやりたいと思って」このゼミに入ったそうです。今のテーマは、ツイッターやウェブなどを含む現代のメディアについて、現象学的な分析をすること。それなら現象学の勉強はどこで?・・・というと、「事象をとらえようとする過程で、核となる考え方を学ぶ必要を感じたら、そのときは宗教・哲学・文学論といったテクストを原語で読む読書会に参加すればいい」と酒井先生。これをやりたいという意欲があれば、学び方すら選べるゼミのようです。
3年・櫻井 謙介さん このゼミの特徴のひとつは、ゼミ時間以外の活動が多いこと。ゼミ生たちはそれぞれのテーマにあった「研究会」にも参加しています。たとえば「食の文化研究会」は、毎月スペシャリストを招いて講演会を開いています。学生だけでなく一般の方も参加でき、7月の講演会では120名を超える方が集まったという人気の研究会です。
この研究会ではコメンテーターとして食に関する専門家の他、ゼミ生が加わります。学生質問者として参加した3年の松坂由季さんは「私が参加した回は寿司職人の方でした。前もってお店に伺い、仕込みや仕入れを見て、インタビューもしてきました。職人とは何かということが少しわかった気がしましたし、お寿司はおいしかったし(笑)」それはゼミ室の中ではできない経験ですね。「そうですね。こういう自由な切り口から勉強していけるのが、このゼミのよさだと思います」。
この研究会のほか、ファッション・社会文化研究会、フローラルデザイン研究会などなど、たくさんの研究会が立ち上がる予定。ゼミの3年生が中心になって計画している研究会もあります。
このような活動について、酒井先生は「ここでは受身で学ぶのではなく、協力してくれる人のネットワークを利用しながら、自分で学びをマネージメントすることを勧めています。それこそ、社会に出てから必要な力ですから」と言います。
その先生は「仙人みたいだけど、エネルギッシュな先生です。酒も飲むし体力もあるし(笑)どんな学生より元気!(櫻井さん)」酒井先生のネットワークとフットワークに後押しされて、ゼミ生たちは教室も大学すらも飛び越え、学びのフィールドを広げています。
3年・松坂 由季さん
ひとことで言えば、さまざまな社会現象・文化現象を総合的に研究するのがこのゼミ。哲学、美学、社会思想といった伝統的な学問をベースにしながらも、既成の学問ジャンルの枠を超えて、各文化圏間相互の関係分析や比較研究を行なうことによって、人間文化の構造を解き明かすことを目指している。
3年・木下 洸平さん
『国家』プラトン著/藤沢 令夫訳
(『プラトン全集』11、岩波書店、1976年)
アリストテレスの師にあたる哲学者プラトンの代表作で、当時の社会の批判的な検討や哲学的考察を通して、理想の国家が構想されています。
およそ2400年も前に書かれた作品ですから、現代のわたしたちには縁遠いものと思われるかもしれません。
しかしながら、正義と幸福、哲人王と善のイデア、国制と魂(メンタリティ)の分析、芸術における模倣の問題など、そこで論じられるさまざまなトピックは今なお刺激に満ちており、現代において文化や美について考えるうえでも欠かすことのできない沢山のヒントをあたえてくれるでしょう。
「食の文化研究会」