2009年度取材

井上 達彦 教授 [博士(経営学)]
井上達彦ゼミナール(商学部 経営コース)
所在地:西早稲田キャンパス11号館
http://www.waseda.jp/sem-inoue/

「問いを自分で立てる」のが大学の勉強

●大型バイクメーカー、ハーレーダビッドソンは、不況の中でなぜ業績を上げ続けることができる?
 →ハーレーマニアのコミュニティで、単なる「モノ」に留まらない
  「ハーレーの世界」の魅力を探ろう!
●若者も住んでいるはずなのに、町内会は年寄りばかりで運営が大変!
 →存在するのに出会えない人たちの接点となる場所を作ろう!

 事業システムの研究と聞くと、巨大企業の構造やケタ数もわからないぐらいの巨額のお金の流れ・・・なんてことを想像してしまいますが、井上ゼミでの研究は、自分たちが興味を持った対象に、まず「飛び込む」ことから始まります。あるときは公文式の教室の片隅に座り、あるときは温泉街の旅館に住み込み、そのコミュニティで実際に過ごしている人に密着。書籍やニュース番組などの二次情報からは得られない「生の声」をつかみ、それをもとに新しい事業やサービス、企業のあり方を提案するという体当たり研究室なのです!
 「受け身だった、高校までの勉強と違って『問いを立てる』ことこそが勉強ですね。問いが見つかれば、研究は半分完成したと言えるくらいです(3年・壺谷 篤さん)」。

ハーレーファンのコミュニティで、20年にわたる増収増益のヒミツを探る。ハーレー好きのおじさんは一見怖そうだけど実はやさしい!のだそう。

チームで考えて、知的な創造物を作る

 「自主的に動き、学べるようになったのは井上ゼミに入ってからですよ」と、受験生のみなさんをほっとさせる(?)発言をくれたのは3年生の渡辺みなみさん。「自分のやりたい研究をしているので、本も読まずにいられないし、とことん考えるようになりました。先輩に『なんでそう思うの?』『なんで?』って追及されるし(笑)」。自分で行動し、考えて、また次の行動につなげるという文化が研究室に根付いているので、その雰囲気が刺激となって、新入生の自主性も発達するのでしょう。
 具体的には、ゼミに入ったらまずチームごとに、事業コンセプト分析を行います。しょっぱなから実際の企業を調査! 「数か月間、みんなでひとつのことを考えていると衝突も起こります。でも、一緒にやってきた仲間だからこそ、思いっきりぶつかれるんです(壺谷さん)」「長い時間をかけてやってたら、自分たちで納得のいく発表をしたいという気持ちが強くなりますから!(渡辺さん)」と、課題に対する真剣さが伝わってきます。
 その後はロレアル社のプレゼンコンテストに出場するなど、外部の大会にもチャレンジしていきます(井上研究室は、受賞歴もすごい!)。「商品開発者はどんなことを考えて、どんな知識がほしいと思っているのか。それを疑似体験することで、マーケティングの手法などのビジネスの知識が吸収できるようになるんです」。これが井上研究室の学習スタイルの理由。いろんな場所に飛び込んで、社会を動かすビジネスを実現する基礎体力を鍛えてみませんか。

慶応大学三橋ゼミとの合同ゼミ。練習を重ねたプレゼンに、鋭い質問が飛び出す真剣勝負の場だ。

世界一の卒論を書く!  井上ゼミの研究テーマは多岐にわたります。「落語班もおもしろいですよ!」と紹介されたのが、4年生の馬上 紗織さん、一山 彩香さん。「落語が400年も続いているのはなぜか?」という疑問から始まった、落語コミュニティ研究を行っています。ひとつの組織が400年も継続している(100年続いている会社でも、割合からすれば相当少ない!)ということは、制度的叡智が隠されているに違いない! そう考えた二人は寄席に通い詰め、演目の終了まで待って噺家に協力を仰ぐという飛び込み調査でヒアリングを重ねました。これから卒論としてまとめあげていく段階なのですが、「部屋の壁が、アイディアを書きとめたポストイットだらけになってます」「話してくれた人の温かさを、感じたままの温度で文章に表したいけど難しい」と、調査で得られた内容をまとめる作業に苦労しているところだそうです。「大変だけど、楽しいのでつらくはないです! この卒論を世界一の卒論にします!」と、充実した表情で語ってくれました。

 二人の卒論用ノート。あらゆる思考が書きとめられるとともに、決意表明や今日食べたもののメモも! 学生生活の集大成だ。


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