2010年度取材

吉田 文 教授
教育社会学(教育学研究科 学校教育専攻)
所在地:早稲田キャンパス16号館

一見常識に見えることを疑ってみる!

 教育に関係する様々な事象に、社会学的な方法でアプローチするのが「教育社会学」。たとえば「不登校」について考えるとき、心理学なら、ひとりの子の内面を探っていきます。社会学では、どこにどれくらいの不登校の子がいるか、学校の中でその子がどんなポジションにいるか、家庭環境はどうかといったことを調査し、どのような社会条件のもとで不登校が起きるかを考えていくのです。
 「不登校とは、登校するのが正しいという認識のもと、ネガティブな意味での〝不〟を付けてできた言葉ですね。そのような見方はどこからくるのでしょうか。事象を研究するには、一見常識に見えることを疑って、それがどんなメカニズムで起きているのかを根本から考えることが大切。そのためには社会学の理論と手法をたくさん知っていることが役立ちます」と吉田先生。

 どんなテーマを扱うにしても、まず社会学的に『考える』ための理論が必要・・・そんな先生の方針で、吉田ゼミは学年を問わず全員が同じ授業に参加しています。2コマ続きのゼミのうち、1コマは最新の研究手法を学ぶための論文講読、もう1コマは研究の進捗報告とディスカッションです。
 ゼミでは新人の修士1年生、市川友里江さんは「ゼミで先輩と一緒なのはとても刺激的」と言います。「研究報告を聞いたり、薦められた本を読んだりして、学部のときはぼんやりとしかわからなかった『社会学』の形がつかめるようになってきました。私は卒論を書きあげたとき、これが本当に私の集大成? と不満だったんです。今は、何が足りなかったかも、もっとやれることがあるということもわかってきて、勉強がとても楽しいです!」

修士1年・市川 友里江さん 社会人になってから入学した院生も多い

目指すものは「自分で考える」こと

 修士2年の松本暢平さんは「高校生に教科以外の知識をどう教えるか」というテーマに取り組んでいます。AOや推薦など大学入試が多様化する中で、高校は何を教えていくのか。主に高校の先生にインタビューをすることで研究を進めているのだそうです。研究手法はゼミで教わるのですか? と聞くと「いえ、ゼミは教わるところじゃないんです」という答えが。「自分でこうやってみたいと発表すると、先生からも他のゼミ生からも、ここが弱いとか、こうしてみたらという反応が返ってくるだけ。教わるというより相談する場ですね」。
 吉田先生は「このゼミで目指すものを一言で言えば『自分で考えるようになること』です」と言います。ゼミ生に求められるのは自立した研究者であること。とはいえ、修士論文の提出を控えている松本さんは、よく先生の研究室に相談に押しかけるとか。「相談に行けばいつでも的確な指摘をしてくれるし、メールでのやりとりも細かい」と先生を慕いつつ(?)「いつのまにか執筆活動に励んでいるらしくて、油断してると知らないうちに新しい本が出ているんだ」と笑う松本さん。どうやらここでは先生もまた「自分で考える」研究者集団の中のおひとりのようです。

 先生自身の研究テーマは「高等教育」、つまり大学そのものを研究しておられます。グローバル化・多様化が進み、大きく変化しつつある日本の大学。それを社会学の視点から読み解き、著作などを通して提言しているのが吉田先生。ゼミ生が目指す「自分で考えるようになること」は、先生の考える「高等教育」の、ひとつの到達点なのかもしれません。

修士2年・松本 暢平さん


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